matohu matohu

COLLECTION

2019 SPRING & SUMMER COLLECTION TRAVELER'S JOURNAL

2019 SPRING & SUMMER COLLECTION TRAVELER'S JOURNAL

青森県の西半分、岩木川一帯に広がる平野を津軽地方といいます。雪深い津軽はどこか遠くの国の印象ですが、春は弘前城をピンク色に染める桜まつり、夏はねぷた&ねぶた祭り、秋には実り豊かな田園とりんご畑など、地域色あふれる本州日本海側の最北端の大地です。夏の津軽を旅してみました。

三内丸山遺跡

縄文時代の巨大集落遺跡です。てっきり山の中にあるかと思っていましたが、海のすぐ目の前でした。海の幸、山の幸に恵まれた古代日本の豊かな生活を思います。

岩木山

津軽を旅する人は、きっと旅のあいだじゅうこの山を眺めるでしょう。弘前市から見るとまさに漢字の「山」の形、別の地域から見ると角が一つの鬼の頭ような形、見る角度によって全然違う印象です。見るたびに新鮮で、なだらか稜線になぜかほっとします。岩木山は、地元では親しみを込めて「おいわきやま」と呼ばれています。実は演歌でいちばんたくさん登場するのが「おいわきやま」だそうです。そういえばあの歌!思い出しませんか?「きっと帰ってくるんだと〜♪…」
岩木山は女性の神様だそう。一度行けばきっと一目惚れしてしまう東北美人のお山です。

りんご畑

青森=りんご、なぜでしょう? 明治8年に3本の苗木が植えられたのが始まりです。涼しい夏の気候がりんごの生育にピッタリ。明治の終わりには日本一に産地になりました。車で津軽を走ると、延々とりんご畑が続きます。たくさんとれるし、りんごを作っている親戚が大抵はいるので、地元の人はりんごを買うよりも分けてもらうことのほうが多いそうです。生食もおいしいのですが、りんごで作ったシードルやお酢、アップルパイなどさまざまに加工されています。とくにウイスキーの樽で寝かせたバルサミコ酢の「バルサミアップル」は、酸味と甘みが絶妙です。

ねぷた祭り

弘前市で開催されるのは「ねぷた」、青森市では「ねぶた」といいます。もともと夏のきつい農作業で「ねむた」くならないようにする「眠り流し」の行事から来ているそう。よくテレビで放映される青森の「ねぶた」は立体人形ですが、弘前はもっとシンプル。形も平面的な扇形です。ロウをつけた筆で紙に描きます。こうするとロウで紙が透けて、内側から輝くのです。
お祭りは8月初めから、1週間続きます。私たちは運良く最終日の「七日送り」出会いました。河原にねぷたがずらりと並び、闇夜を照らします。最後は火をつけて燃やし、夜空に火の粉が舞い上がります。これが終わるともう早い秋が訪れるそうです。

白神山地とブナ

人の手が加わっていないブナの原生林が広がる白神山地は、日本で初めて世界遺産になった場所。1万年近くそのままの姿です。中心部分は今でも道がなく、立ち入ることはできません。車で行ける峠からすこし歩くと、樹齢400年のブナの巨木「マザーツリー」がそびえています。その名の通り、周りにはたくさん子孫の巨木が取り囲んでいます。400年前といえば江戸の初めの「慶長期」。その頃から生きているブナに触れると、歴史とは一睡の夢のように思えます。

ブナコ

ブナは水気が多くて木材にむかない。だから白神山地は残ったそう。それをどうにかして役立てようと開発されたのが「ブナコ」。ブナを巾1cm、厚さ1mmのテープ状にしてコイル巻きにし、形を自由に変形させた器です。湯のみ茶碗を片手にもって、押しながら成形するのがユニーク!白神山地の入り口の、廃校になった小学校を再利用した工場で、ブナコ作り体験もできます。

こぎん研究所

こぎん刺しを今に伝える研究所。所長の成田さんや女性スタッフ、内職のみなさんが和気あいあいと働いています。この建物は1932年に前川國男が建てたデビュー作。ル・コルビジェに学び、日本のモダン建築の基礎を作った前川さん。80年以上経った今も、建築好きにはたまらない魅力をたたえています。江戸時代のこぎんと昭和のモダンが同居しているのが素晴らしいです。

七里長浜

白神山地を源流にした岩木川は、津軽平野を抜けて日本海に注ぎます。その最終地点に広がる砂浜が「七里長浜」です。実際に七里(28km)あるそうです。この旅の最後に訪れました。ちょうど夕日が落ちる時間。日本海に黄金の太陽が沈んでいく景色は圧巻です。太平洋側で暮らす私たちには、ドキッとするような濃い海の青でした。

pagetop