「民族に色があるとすれば やはり日本民族は藍ではないだろうか」 − 志村ふくみ
藍染の布を手にとって見つめる。色は眼に触れてくる。まず深い紺や奥行きのある群青だ。それから赤や黄色、緑や茶色がほのかな音色で聞こえてくる。それは眼にはさやかに見えないけれど、この青に溶けて眼の奥に触れてくる。純粋な化学染料から見れば、「雑味」かもしれない。だが、人にとってはむしろ重奏的な「和音」だ。大地で生まれ、太陽と水に育てられ、人の手が丁寧に添えられた、植物の命の色そのものである。
藍とは、1年草のタデアイを材料にした染料のことである。葉に含まれる青いインジゴ成分で作られる染めは世界中にあるが、主に日本で使われ愛されてきたのはこのタデアイによる藍である。
タデアイを夏に刈り取り、葉を細かく刻んで乾燥させ、秋から冬にかけてかき混ぜながら発酵させたものを「すくも」という。これを染液にするには、灰汁や石灰などを入れてかき混ぜ、還元発酵させる。数日後、表面に玉虫色に光る紫の泡が生まれれば完成だ。このふんわりと咲く泡を「藍の花」という。
藍液には微生物が活動していて、いわば「生きている」。だから時々日本酒などの栄養をあげて温度を保ち、上手に育てなければあっけなく死んでしまう。死んだ液は、もう二度と染めることができない。長年の経験と自然の摂理が生み出す伝統の染色だ。
徳島県は江戸時代「阿波」と呼ばれ、「すくも」の国内最大の生産地だった。毎年氾濫する吉野川が土地を肥えさせ、タデアイの栽培に適していた。そしてこの阿波の「すくも」は品質が良く、日本各地の染織文化を花開かせた。絣や絞り、農民の作業着まで、藍染めは生活に欠かせないものだった。布を強くし、虫喰いを防ぎ、なにより美しい色に染まった。明治に来日した外国人たちは、日本人がみな藍色の着物ばかりを着ているのを見て、「ジャパンブルー」と呼んだそうだ。これほど身近で民族的に愛された色は他になかった。
しかし石油から精製された化学藍が流行すると、手間のかかる藍染はあっという間に衰退した。1966年、徳島のタデアイの畑は最盛期の約0.03%に激減し、危機的な状況になった。現在すこし回復したが、「すくも」を作る「藍師」はもう5軒しかない。畑も少なく、需要に追いついていない。
「藍は、農業だと思っている。」
藍師の新居さんは強くそう言う。藍畑に広がるみずみずしい葉に触れると、衣服も染色もかつてすべて農業であったことを実感する。植物から命をもらい、伝統的な手で作り出す本物の「天然染色」の魅力。今あらためてそれをまとい、自分の肌に触れさせたい。私たちの時代にも、さらに次の時代にも。
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