服を作るということについて考えてみる。それはこの世のすべての営みとひとしく、たくさんの手がリレーのように添えられてここにある。ただし残念ながら、実際には知られていない生産背景も多い。
ところで最近「知っているようで知らないこと」が、とくに増えたように思う。なんでもスマホで検索して、疑問を「即終了」させる習慣が身についてしまったからだろう。昔はわからないことがたくさんあった。そしてわかった時の喜びも大きかった。いまは一瞬で「知る」欲望が満たされてしまう。でも実はそれはわかった気分でしかない。一生バナナを食べなければ、バナナの味はわからない。
パンデミックという自然からのカウンターパンチをくらって、やや冷静になって周囲を見渡してみる。私たちはもう一度「原点とは何か?」を見つめ直す必要がある。家族、仕事、それを支える服、食事、住まい。だれもが「突然の死」と隣り合わせの時代に、目線は身近なものへ注がれる。ぼやけていた「生きる時間」が、鮮明にフォーカスされてくる。
物作りのリレーをもっと丁寧に、もっと身近に、そして深く掘り下げる。それがいま向かうべき旅先だ。あまりに近すぎて旅しなかったところへ、解像度を上げて旅立とう。「知らないこと」をより良く知る旅へ。
服をつくるためには、まず布が要る。布がなければ、服は受肉しない。コンセプトもデザインも布から始まる。けれど布を作る人たちは、ふだん服の後ろ側にいる。手織りの作家とは違って、ほとんどの布は機械で作られている。だから工場で働く人は褒められることも、名前が出ることもめったにない。けれど実際に現場に行くと、工夫を重ね、良い仕上がりを目指す人たちがそこにいる。手の延長として、機械が働いている。彼・彼女たちと話すと、物作りの喜びと息づかいが聞こえてくる。
また、縫製工場の人たちがいなければ、服は存在しない。布を裁ち、さまざまなパーツを縫い上げるのも、すべて手作業だ。ミシンやアイロンはその道具のひとつにすぎない。縫製は同じ作業の繰り返しではない。あらゆる布に癖があり、仕上げに勘所がある。きれいに出来上がって当たり前の仕事の背後に、どれだけたくさんの創意と工夫があることだろう。縫製した人の名は残らないけれど、日々の生活に仕えてくれる大切な仕事だ。
そして私たちのブランドのスタッフ。型出しと仮縫いを繰り返し、服の完成度をコツコツ上げていく。たとえコンピューターで型紙を読み込んで、プロッターが裁断してくれても、やはり手の延長だ。型紙を無駄なく布に配置して工場に送り出すのも、検品した服をお客様に販売し送り出すのも、手と心があってこそだ。
一着の服について考えてみる。たくさんの手のリレーをさかのぼっていくと、もうこの世にいない人たちの仕事まで見えてくる。染織も、縫製技術も、機械も突然生まれたわけではない。あらゆる命のつながりと同じように、経験や道具には長い旅路がある。手のひらの上が、いつもその豊かな交差点だ。
職種:店舗販売 / 営業 / 生産管理 / パタンナー / デザイナー
正社員登用、給与は経験により相談。月20万円以上。
年齢性別不問。
厚生年金、健康保険、雇用保険等完備。交通費支給、賞与。
ご希望の方は、メールにて履歴書と職務経歴書をお送り下さい。
通過者のみ面接の返信をいたします。なお募集の職種は時期によって異なる場合があるのでお問い合わせください。
*学生のインターンは随時可能ですので、希望者は面接いたします。
送信先メールアドレス:matohu@lewsten.com
◇ matohuの理念
「日本の美意識が通底する新しい服の創造」をコンセプトに文化や歴史を大切にしながら、現代人の心に響く魅力ある「デザイン」を生み出すこと。それを深い「言葉」で表現し、共感者の輪を拡げて行く「場」を作って行くこと。
この3つを通して、多様で心豊かな世界をともに作り上げることがmatohuのプロジェクトであり、理念です。
◇ 仕事のやりがいと人間的成長
まかされた仕事を自分の創意で工夫していける環境です。1Fはショップ、2Fはアトリエになっており、デザイナーと直接話しながらアイデアを実現していけます。また文化、歴史など幅広い知識を学ぶ機会も多く大人の教養と礼儀が身につき、人間的にも成長できます。
人の心に彩りを添えるデザインを生活のなかに!を合い言葉にこれから世界に向けて発信するmatohuのスタッフを募集します。