手のひらの旅は12回目を迎える。
この旅は、「工藝とは何か?」を問いかける旅である。それはなにも「伝統工芸」に限らない。人が自然の恵みから生み出す、すべてのものを指す。だからこの問いにシンプルに答えるなら、こんな言葉に辿り着く。
工藝とは、私たちを生かすものへの感謝と祈りのかたちであると。
今回は能登を旅する予定だった。能登半島には、伝統的な民家や祭礼があり、豊かな山海の食文化があり、輪島塗を中心とした手仕事がある。塗師の赤木明登さんに案内してもらいながら、その魅力をたっぷり伝えるつもりで何度も足を運んできた。
2024年1月1日、能登半島地震が起きた。マグネチュード7.6の揺れは、海岸を隆起させ、古い街並みを破壊し、多くの命が失われた。震災は、高齢化と過疎化で衰退していたこの土地の工藝を、さらに大きく揺さぶった。
地震直後に、赤木さんはSNSでこう書いている。
「 穏やかに見える日常でも、世界は恐ろしいスピードで壊れていく。災害は、たまたまその様相が見えるような形で表面にあらわれたにすぎない。否応なく、すべてがやがてその大きな力にのみ込まれることを、人は知りながら、それに立ち向かうこと。それこそが、ものをつくるということだと思う。だから、人生はすばらしい。工藝はすばらしい。 」
私たちは長い歴史を通して、自然の豊かな恵みに感謝して生きてきた。時に暮らしを揺さぶられることがあったとしても、たえずその積木を積み直してきた。崩れては積み上げ、失われては作り直してきた。そして命を与えては奪うこの圧倒的なものに立ち向かい、未来の無事を祈ってきた。
私たちはいかに生きてきたのか、これからどう生きるのか。
工藝は、その道をしめす祈りのかたちなのだ。
職種:店舗販売 / 営業 / 生産管理 / パタンナー / デザイナー
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「日本の美意識が通底する新しい服の創造」をコンセプトに文化や歴史を大切にしながら、現代人の心に響く魅力ある「デザイン」を生み出すこと。それを深い「言葉」で表現し、共感者の輪を拡げて行く「場」を作って行くこと。
この3つを通して、多様で心豊かな世界をともに作り上げることがmatohuのプロジェクトであり、理念です。
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